計算化学の手法

計算化学を始めるために、まずはどんな手法があるかを見ていきましょう。

計算化学と一言で言っても、様々な手法があります。自分が計算したい対象によって適切な手法を選択することが重要なのですが、その選択がまず初心者にとって壁になるのかなーと思います。

「計算化学 手法」とかで検索すると、こんな感じの図がちらほら見られます。


このブログでは、CAEは扱う予定がないのでそれ以外の手法について見ていきますね。

計算したい対象がどのくらいのスケール(大きさ)まで考慮する必要があるのか、見たい現象を再現するのにどのくらいの時間を計算しなければならないのか、それをおおざっぱに示したのが上の図です。

このスケールや時間、さらには見たい現象のどこまでミクロな部分を考慮しないといけないか、計算機の余力的に現実的な手法はどれか、という問題を常に考えなければいけません。

『さらには』の部分をざっくりと表現すると、下図のようなイメージです。計算の最小単位が電子である量子化学、第一原理計算は最も精度が高いです。しかし、計算コスト、つまり計算にかかる時間が非常に長くなります。

一方で、最小単位が原子であり、電子状態を扱わない分子動力学(全原子)は精度が落ちるものの、必要な計算量が減るので計算コストが下がる、といったイメージです。分子動力学(粗視化)は複数の原子をまとめて一つの粒子として扱うので、さらに計算コストは下がりますが、精度も落ちてしまいます。

このように説明すると、「じゃあ、計算の精度とコストのバランスのみで手法を選択すれば良いのかな?」と考える人もいるでしょうが、そうではありません。ここで、先ほど説明した、どこまでミクロな部分を考慮するのか、どのくらいの長さ(大きさ)が必要か、どのくらいの時間を計算しなければならないのか、これらを見たい現象に合わせて考える必要があります。

例えば、化学反応を扱いたいなら電子状態まで考慮しないといけないので、必然的に量子化学計算や第一原理計算を選択することになります。一方で、凝集した際の密度が知りたいのであれば、複数の分子を凝集させた状態が必要、つまりある程度の長さ(大きさ)が必要となります。その際に、電子状態まで考慮すると計算コストがめちゃくちゃ大きくなるし、精度は分子動力学(全原子)で十分だから、密度の計算には分子動力学(全原子)を使おう、といった感じで手法を選定します。

ただ、実際には、「自分が見たい対象と現象がどこになるのかがわからない」「どの手法を使えば良いかわからない」、ってことが多いと思います。そのあたりの知識や感覚って、実際に手を動かして経験していかないとなかなか身につかないんですよね…。

自分の見たい対象と現象が明確になっていて、すぐにでも結果を出したいということであれば、シミュレーションを専門としている企業や大学の先生に相談してみるのが一番手っ取り早いです。

まだ企業や大学の先生に相談する段階ではなかったり、とりあえずどんなことが計算できるのか知りたいって人ならば、このブログも含めてネットの記事や書籍等を参考にし、手を動かしてみるのがオススメです。

個人的な意見としては、理論から学び始めるよりも、まずはチュートリアルなどに沿って手を動かし、その後必要に応じて理論を少しずつ学んでいくほうが継続していけると思うんですよね。最初から数式ばっかりだと嫌になるでしょうし(笑)

次回は分子動力学法に対応しているプログラムをいくつかピックアップして、それぞれの特徴について書いていこうと思います。


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